教授挨拶

発達神経病態学は小児神経学の研究・教育・診療を行う領域であり、小児神経科として小児期の神経疾患の診断・治療をしています。

子どもが年齢とともに発達することは、余りに自然な現象と思われるかもしれません。例えば生まれたては寝ころんでいるだけの赤ちゃんが、1歳ころになれば立って歩き片言をしゃべるようになり、成長するにつれ言葉が増え活動範囲が広がります。しかし人の発達という現象は謎に満ちています。発達の背景として何が中枢神経系で起こっているのかについては、まだ未知のことが非常に多く、私たちが解明しようと努めています。

発達過程の中で脳神経系に異常がおこると、疾患の種類により年齢により様々な障碍が発生し、その影響はしばしば生涯に及びます。小児神経学ではこのような正常な発達現象と発達過程の中で神経系におこる種々の疾患を研究しています。子どもの神経疾患は成人とは種類が大きく異なるので、その診療には小児神経学の専門性が必要です。

私たちの教室の診療と研究の中心は小児てんかん特に難治てんかんです。てんかんをもつ子どもは非常に多いのですが、治り易いタイプと治療が難しいタイプの両極端に分れます。その診断や治療方針の決定にはノウハウが必要ですし、私たちにはその蓄積があります。これまでは抗てんかん薬による薬物治療が主体でしたが、今はそれに加えて外科治療が進み、多くの患者さんの難治発作が手術で抑制できるようになっています。また隠れている稀な代謝異常症を発見して特別な治療を行うことで病状が劇的に改善した患者さんもいます。複数の診療科の連携を通して、岡山大学病院てんかんセンターならではの診療を進めています。

一方で子どもの心や行動発達の問題には社会的関心が集まっています。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)をはじめとする種々の発達障碍に関する話を聞かない日はない程です。しかしその解決策はまだまだ確立されていません。心と脳は表裏一体ですので、両方の側面から岡山大学病院小児医療センターとして取り組んでいます。

このような発達過程の小どもの脳神経系におこるさまざまな問題と結果もたらされるハンディキャップを解決することは大きな課題であり、一層多くの開発が必要です。私たちはそのために日々研究を進め、成果を診療に生かし、同時に後に続く若い医療者の教育をしています。一人でも多くの方が小児神経学に関心を持って下さることを願っています。

教授 小林勝弘

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